家庭用品品質表示法2009年04月18日 11時11分11秒

前回の記述のついでに家庭用品品質表示法についても調べてみました。
(経済産業省のページより抜粋。)

(16)漆又はカシュー樹脂塗料を塗った食事用、食卓用又は台所用の器具

ア)対象となるものは、木製及び合成樹脂製のもので漆又はカシュー樹脂塗料や
  メラミンアルキド樹脂、ユリアアルキド樹脂、ウレタン樹脂等を塗ったものです。

イ)「品名」

・漆器-表面の塗装に天然の漆のみを使用したものは「漆器」と表示します。

・合成漆器-表面の塗装に天然の漆以外のものを一部でも使用したものについて
        「合成漆器」などの適正な用語を用いて表示します。

ウ)「表面塗装の種類」は、その塗装の種類の名称を示す用語を
  用いて適正に表示します。
  2種類以上の表面塗装を行っている場合は、その塗装部分ごとに
  部分の名称とそこで使われている塗装の種類を表示する必要があります。
  下地塗装を行っているものについては、「下地塗装」の用語と括弧書きで
  その塗装の種類を表示します。

エ)「素地の種類」は、器具の主な部分に使用されている素地の種類の名称を
  用いて適正に表示します。また、合成樹脂を使用したものにあっては、
  合成樹脂加工品品質表示規程に準じて合成樹脂の種類を表示します。

オ)「使用上の注意」は、使用方法、使用後の手入れ方法及び保存方法について
  製品の形状又は品質に応じて適切に表示します。
  また、表示は下げ札の取り付け、刻印、ラベルの貼り付けなど本体から
  容易に離れない方法で表示することとなっています。
  なお、一部の製品(大きさ、形状が一定の面積以下)については、
  一部の表示(表面塗装の種類及び素地の種類)に限定して
  表示することができます。

当店のコメント
 この表示は本来、生産者がつけるべきものではありますが、
 当店が扱う商品の多くは作家さん(=個人)が作品を
 創作しているという現状を鑑み、当店が本表示に関わる
 内容をヒアリングをした上で店頭での表示をしています。
 (但し、仕入が古いものについてはこの限りではありません。)
 また、この表示を当店が漆器に貼りつける事については
 作品を損なう恐れや責任の所在が曖昧になるなどの観点から、
 実施しない事としていますのでご理解下さい。

感想
 家庭用品品質表示法には陶器の記述がない。
 どうみても用途的に漆器に近いのだがどうして?
 縦割り行政が原因?土鍋から鉛が溶出した事もあったのに。
 情報をお持ちの方は教えて下さい。

日本漆器組合連合会の表示規定2009年04月16日 11時11分11秒

品質表示の事について気にしていたら日本漆器組合連合会での
決定事項というものが見つかったので掲載します。

ちなみに、日本漆器組合連合会とは漆器製造業者(社)の団体で
漆製造に関しては全国漆業連合会という別組織があります。
ここ規定される『漆の定義』は後日掲載します。

一見、同じ事を定義しあっているように見えますが、
漆を作って売る者(漆屋)とそれを買って木地に塗り漆器にする者
(漆器製造業者)が分かれている為にそれぞれで定義する必要がある訳です。
つまり、漆屋から漆器製造業者が(漆屋の規定する)漆を買ったとしても
漆器製造段階で添加物を加える場合があるので漆器製造業者でも
漆と表現できるものについて再規定しているのです。

では、日本漆器組合連合会での漆の規定です。
家庭用品品質表示法・雑貨工業品表示規定の表示に関連して
規定されています。


------以下、日本漆器組合連合会での漆の規定。----------------


1.家庭用品品質表示法を遵守すること。
2.
①漆に、着色剤(鉄、顔料等)、乾性油(亜麻仁油、荏油等)、
  天然の補助剤(ロジン、コーパル等)やその他の補助剤(粘度調整剤*1、
  硬化剤*2)を加え塗装したものは、漆塗装と表示できる。
  ただし、硬化剤の量は必要最小限になるよう各社が企業努力し、
  硬化剤の配合上限量は漆に対して10%以内とする。
  *1 粘度調整剤とはテレピン油、ショウノウ、灯油等の揮発性有機溶剤をいう。
  *2 硬化剤とはポリイソシアネート等をいう。
  品名は、漆器、表面塗装の種類は漆塗装となる。
②漆に合成樹脂塗料を混入(数パーセントでも)したものは、
  漆塗装と表示することはできない。
  品名は合成漆器・木製容器・塗り加工品等となり、表面塗装の種類は、
  漆と合成樹脂塗料の混合塗装(例:漆とウレタン樹脂塗料の混合塗装等)となる。
③「新漆塗装」の名称は商品名であり、一般名称ではなく、かつ、
  漆塗装であるかの誤認を消費者に与える恐れがあり
  この用語の使用を認めないものとする。

3.上記のうち、②の漆に合成樹脂塗料を混入した場合の表示は次の通りとする。
  漆の比率が50%以上の場合は、漆と合成樹脂塗料名の混合塗装とする。
  (漆の比率を付記すること)
  漆の比率が50%未満の場合も、合成樹脂塗料名と漆の混合塗装とする。
  (漆の比率を付記することが出来る)


------以上、日本漆器組合連合会での漆の規定。----------------


当店の解説(推測を含む)
 2.については昔から添加物として使われていたもの(つまり、天然素材)は
 OKということ。
 硬化剤のポリイソシアネート等は最近の添加物だが、漆器製造工程上
 必要などの判断から配合上限量を設けて許しているようだ。
 3.は表示の順番を言っているのであるが、漆と合成塗料という
 2つに分けた観点で書かれている。
 たぶん法的には漆の割合が45%で合成塗料Aが30%、
 合成塗料Bが25%の場合、漆、A、Bの表記順になるのであるが、
 天然塗料と合成塗料という部分に焦点を当てて
 合成塗料(A、B)55%、漆45%と表記しなさいということだろう。
 あと、重量比か容積比か明示されていないが、趣旨からして
 漆の比が小さくなる方で表示するのが適切だと思う。

ご注意)
  記載内容や当店の解説について誤りがあった場合は随時書き換えを
  行いますので、本ブログを参考とされる場合は最新のものを確認されるよう
  お願い致します。

××社の不当表示について2009年01月17日 11時11分11秒

「木製加工品」「漆塗」などと表示しながら、実際は大部分に合成樹脂を
使用していたとして、公正取引委員会は14日、××× *1 に
景品表示法違反(優良誤認)で再発防止を求める排除命令を出した。
との記事が出ました。

当店の場合は作家ものが中心であり、元々漆屋でもあることから
当店の漆をお使い頂いている方の作品を置いているので
作家ものについての心配はまず無いと言える。

 理由
  素地に関して
   ・一般的に合成樹脂を使う場合は金型が必要で、
    金型を作成にはかなりの費用がかかる。
    これを少量多品種生産の作家さんが行うのは経済的に困難で、
    作家さんにとって合理的でない。
    (金型を使った生産は大量生産をする大企業向きであある。)
   ・漆屋である当店が見て怪しいものはチェックされ、排除される。
  塗りに関して
   ・当店で漆をご購入頂いている作家さんのものがほとんどで
    買った漆を使わずにその他の塗料を使う事は考えづらい。
   ・漆屋である当店が見て怪しいものはチェックされ、排除される。 

但し、上述の理由は全て状況証拠のみである。
作業場でずっと監視している訳ではないのでどうしてもその様になる。
厳密には商品を分析しなければ本当に正しいか断言はできない。
しかし、作家ものは一品ものが多く、試料を必要とする現在の分析手法は
使えない。分析=一品ものの作品に傷をつける=売り物にならなくなる事だからだ。

ただ、上述の理由にも増して作家ものは作家さん自身の名前を冠して
販売・流通しているので責任の所在が明確である事に留意して欲しい。
作家さんにとって自身の名前そのものがブランドだから、そう滅多な事はできない。
これは不正に対する大きな抑止力で自身に置き換えてもらえれば判ると思う。
貴方も自分のサインを入れて世に出すものにはいい加減な事は出来ないでしょう?

一方、産地のものに関してはどうか。
これは玉石混交だと言わざるを得ない。
産地とは元々その特産品を作る独立した人間が集まった地域の事なので、
有名な産地であっても塗りの技術も弟子レベルからベテランまで、
また、考え方も十人十色なのだ。その上、分業制となっている。
多くの人は堅実にやっていると思うが、その結果有名になったところに
不埒な輩が混じった場合、どうなるかは判らない。
(昔はプラスチックや合成塗料は無かったので現在のような問題は無かった。)
また、業界が小さい為、法令改正が伝わりきらない部分もあると思われる。
(大企業のように常時法令を監視している部門がある訳ではないので)
従って、当店でも仕入に当って産地品はよりシビアな判断が必要とされる。
当店にも一部産地ものがあるが、少なくとも素材の確認をして仕入れるし、
その上でなおかつ怪しい場合には漆塗りなどの表示をしないようにしている。
騙されたお客様に対する責任が無くなる訳ではないが、
上述の××社はこれに引っかかった可能性がある。
当店も注意しなければとつくづく思う。

結局、漆のものについては信頼のおける作家さんや販売店で購入する
というのが一番の安全ではないかと思う。

備考)
  今回の件では××塗スプーン5本セット(3570円)とあったが、
  ××は国内であり、国内産でこの値段だと本当に木製で漆塗りかを
  疑わないといけないと考えるべきだという参考になる。

*1 ××の部分は社名が入っていたが、販売者であり、どの程度この
   問題に関与していたかや、商品表示が具体的にどうだったかなど
   私の見た記事だけでは不明だったので社名は伏せている。

呂色塗り漆器の光沢(艶)について2008年10月31日 11時11分11秒

     呂色漆を用いた漆器には以下の2種類があります。

       1)呂色漆を塗ったままのもの
          2)上記1)の塗りの後に磨きの工程(呂色磨き)を行ったもの

  呂色磨きの漆器は購入時点で艶(光沢)がありますが、
     呂色塗りの漆器には艶(光沢)がありません。
     呂色塗りの漆器はスポンジで洗ったり、布で拭いたりする事が
     磨く事(鏡面磨きすること)と同様の作業となり、次第に艶(光沢)が出てきます。
     上の写真の漆器は呂色塗りのものですが、
     左が未使用のもので、右が1年半使用したものです。
     蛍光灯の光の反射具合にご注目下さい。

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やっぱり箱は必要だよ。2008年08月01日 11時11分11秒

反省を込めてブログを書いてみる。
最近改めて感じた。”やっぱり箱は必要だよ。”と。

当店は漆屋さんという性格を持つ関係で作家さんから作品だけを
箱なしで仕入れる事があるのだが、やはりそれってまずいなぁと思う。
箸とかなんかは和紙で包んであげると格好がつくのでいいんだけど、
お椀なんか(それらの類を含む)は包み方を色々調べてみたけど、
そのままではどうやっても上手く包めない感じだ。
ここでいう”上手く包めない”とは高級感とかそういうものを
損なう事無く包むことが出来ない事を意味する。
これらのものは上手く包もうとするとやはり箱が必要である。

どうしてそう思ったかと言うと、
漆に造詣がある方の自分使いは包装なんかは気にされないのだが、
それがご贈答用となると話は別だからだ。
せっかくの逸品が包装が良くないだけで非常に安っぽく見える。
漆に造詣があり、贈り物にと考えて頂いたお客様に申し訳ないし、
そんな事で贈られた方に漆の良さが伝わらなくなってしまうとしたら
残念でもある。第一印象は大事である。
それに作家作品だから産地の安い漆器と違うので箱は必須だろう。

ただこれも単純に当店だけの問題ならBlogに書く必要もないのだが、
貼り箱の実態を調べてみるとそう単純でもなさそうな事が解ってきた。
特に貼り箱の生産方式の問題が大きそうだ。
現代はほとんどの業界が大量生産前提の仕組みになっているからだ。
箱に関して言うと、抜き型を作り、厚紙をポンポン抜いて製作される。
紙を貼る部分もある程度機械化されているようである。
この業界も価格の大半が人件費だろうから、抜き型を作る部分の
経費が意外と高いと思われる。
つまり1個作っても100個作っても代金の総額は思ったほど変わらない。
数が多いほど単価が下がる。(例えば印刷業界もそんな感じ。)
となると、大きさが1つ1つ異なるものを作る作家さんにとっては
手間も費用も大変な事になる。

で、考えたんだけど、費用は別として手間が問題なら杉本商店が
何かお役に立てるのではないかと。
貼り箱の取扱量が増え、ある程度サイズがまとめられれば費用も
多少なりとも安くできるような気がするし。
工芸品の最終商品化の部分を杉本商店が担う必要があるか、
担えるのか検討してみる価値はありそうだ。
ただ、作品とのトータルイメージを作り上げるには作家さんの考え方や
意思が重要なので作家さんの積極的な関与も必要だが。

追記
 これだけをやる訳にはいかないのでボチボチ調べてみようと思う。
 大した事でなくても一人で調査とかしていると忙しいんだ。

後日記
 箱1個だけでも作ってくれるところはありますね。
 でもお椀とかの箱のサイズで1箱300~500円くらいはかかりそう。*1
 このくらいの値段は普通っぽいので、とりあえず最初のうちは
 当店に漆を買いにきたついでに箱が入手できるという事の
 メリットがあるかどうかだと思う。後は手間の部分をどう考えるか。
 箱を郵送してもらっていて送料が掛っているのならメリット有りかな。
 ただ、計画性は持たないといけないけど。

 箱を作ってみた事もあるけど、箱を作るための大きなボール紙の
 入手が困難そう *2 なのと、直線や直角がちゃんどできないと
 かなり出来の悪い箱になってしまうので、自分で箱を作る場合
 その点の解消がポイントとなりそうです。

*1 箱のサイズ、ボール紙の厚さ、貼り紙の種類などで値段は
   変動する。業者在庫の紙だとダメな場合は持ち込み可のようだ。
*2 一般に販売されているボール紙の最大はA3なのだが、
   意外とそれでは大きい箱は作れない。
   また、大きくなればなるほど、直線を正確に切りにくい。