漆について(ツイッターまとめ:生漆)2010年12月01日 14時56分45秒

初めて漆を始めようとされるお客様によく有りがちなのが、ご来店そうそう「漆を下さい。」と言われる事です。こちらが「どんな漆が必要ですか?」と尋ねると「???」。そう、漆は1種類ではなく、用途などに応じた幾種類かの漆があります。それらについて追々ツイートしていきます。

漆は用途、原産国、製造方法などの観点から区分ができます。お客様へ漆をお渡しする視点からは用途、原産国(=ご予算)が判れば決まりますが、漆の取扱いについては、製造方法から見た方が判りやすい部分がありますので、まずは、製造方法の観点から分類してご説明します。大きく分けて2種類です。

前回の漆ツイートの製造方法の観点から分類して2種類です。は精製の有無で2種類という事になります。非精製漆と精製漆。この違いは漆を乾固させる時に室(むろ:風呂)に入れるか入れないかの違いに繋がります。精製漆は製造過程で水分を除くので乾固させる時に湿らせた室に入れる必要があります。

非精製漆には粗味(あらみ)漆と生(き)漆があります。粗味漆は漆の木から掻き取ったままの漆で掻き取った際に混入する夾雑物を含むもの。その夾雑物を漉し取ったものが生漆になります。夾雑物は製造段階では意味を持ちますが販売時はあまり意味が無い為、一般的に漆屋で売られているのは生漆です。

生漆の用途は主なところで下地、艶上げ、拭き漆でしょうか。生漆(他の漆も同様ですが)の区別としては産地別があります。①日本産、中国産(ウルシオールが主成分)、②ベトナム台湾(ラッコール)、③ビルマ(チチオール)。当店は①までですが、漆屋さん毎に確認すると良いでしょう。それと、生漆で一番大事なのが鮮度。こればかりは使ってみないと判りません。また、ご購入後のお客様の保管方法によっても鮮度が大きく変わります。冷暗所保管が基本。漆(特に生漆)は生ものという事を心得て取り扱って下さい。適切に保管して公式見解で6ヶ月が消費期限です。

漆屋さん通信 その122010年09月15日 13時00分10秒

1年間のご愛読ありがとうございました。
多少は漆の事をご理解頂けたでしょうか?
もしこの”漆屋さん通信”が皆さんの漆への理解の
一助になれたのであればこの上ない幸せです。
エコロジーが叫ばれる昨今、元来エコロジーなうるしの器が
ご理解を得て末永くご愛用頂ける事を願ってやみません。

今回をもってとりあえず、漆屋さん通信の連載は停止し、
次回新たな内容でお目に掛かる事になると思います。
その節はまた宜しくお願い致します。

それでは以下に1年間の内容を簡単にまとめてみます。

①うるしの器は工業製品ではなく自然そのものです。
従ってうるしの器の扱いの基本は木が嫌がる様な
長時間の浸水、急激な温度変化、硬い物との接触を避ける。
という事になります。

②うるしの器は良い漆を塗ったものを選んで下さい。
良い漆とは添加物の無い漆で、塗りっ放しの場合、
光沢は無く、触った時に”フワッ”とした手触りがあります。

それではまたお会いする日までお元気で。

* 以前配布した資料の再掲です。

漆屋さん通信 その102010年07月30日 13時21分37秒

Vol.5で”良い漆を使った漆器は持った時にフワッ...”
と書きました。
こうなる理由を漆屋さんの観点から書いてみます。
以下の内容は厳密な意味での科学的表現からズレますが、
”覚えやすくするにはこんな感じ。”
的な説明になっていますのでその様な理解の上で
以下の内容をお読み下さい。

一般的な多くの塗料は揮発成分(シンナーや水)などが
抜けて乾くものという事は皆さん良くご存知かと思います。
でも、漆はこれとは異なる乾き方をします。
漆は空気中の水分(つまり湿気)から酸素を取り込んで
(吸収して)乾燥するのです。
”ラッカーゼが酸素を取り込みウルシオールを酸化する。”
のですが、この過程を化学的には酸化重合と呼びます。
ここでは酸化重合の話は難しいので割愛しますが、
乾くという事柄にも2種類あるという事をご理解下さい。

片や抜けて乾く、片や取り込んで乾く。

この違いが出来上がりの質感に大きな違いを生むのです。
取り込んで乾く漆は当然フワッとした仕上がりになる訳です。
また、抜けて乾く塗膜が弱いのは容易に想像できますね。

* 以前配布した資料の再掲です。

漆屋さん通信 その92010年04月01日 13時36分10秒

今回は前回のVol.8の内容をより具体的に記述してみます。
ただ、皆さんの使用方法を全て網羅できないのも
事実ですので、こんな事して大丈夫かなぁと迷ったときは
Vol.8の考え方に戻って判断してみて下さい。

①水に浸けたままにしない。は漆器の基礎である木部に
水分を浸透させてはいけないという事です。
木は水を吸うことで歪んだり膨張したりします。
そうすると、その変形に漆がついていけずに
漆が剥がれたり割れたりします。
漆は呼吸をしていますので浸け置き洗いで
長時間水に浸ける事はNGです。
同様の理由から浸透力のある洗剤を原液で使うのも
避けたほうが無難で、薄めてから使った方が良いでしょう。
②急激な温度変化が起こる環境に置かない。は
木の繊維中にある空気などを急激な温度変化で
膨張・収縮させないという事です。
電子レンジや食洗機で使う事はNGです。
万が一やってしまった時の結果は①と同じです。
③硬いもので擦る事はしない。これは説明不要でしょうか。

結局こうしてみると人間(皮膚)が嫌な事はしない。
と言うのも正しい理解の仕方のように思えます。

* 以前配布した資料の再掲です。

漆屋さん通信 その82010年02月16日 13時29分29秒

今回のテーマは漆器の扱い方についてです。

漆器は基本的に木と木の樹液である漆から作られています。
つまり、漆器は木そのものなのです。
但し、生きている木とは異なり自己修復はできません。
これが漆器を理解しようとする時の基本となります。

従って、盆栽や庭木にやらない事は漆器にもしない。
かつ、自己修復できない漆器には多少の愛情を
込めて接するという心構えが必要になります。

なんか難しそうに聞こえるかもしれませんが、
ちゃんとした良い漆を塗った漆器なら
皆さんが考えているよりもずっと気軽に使えます。
そういう観点から避けたい使用方法は以下の通りです。

①長時間水に浸けたままにしない。
②急激な温度変化が起こる環境に置かない。
③硬いもので擦ることはしない。

普通、水に浸かったままの木はやがて枯れますし、
南国の木を極寒の地に植えても根付きません。
木に石が当れば傷がつきます。注意点は普通の木と同じです。
次回はこの事を具体例で示していきます。

* 以前配布した資料の再掲です。