本漆の漆器を買える漆器店はどこにありますか?2010年05月18日 14時05分44秒

ご質問)
本漆の漆器を買える漆器店はどこにありますか?

補足
材料は外国産でも構わないので、下地からちゃんと天然漆を
使っている漆器を保証してくれるお店を探しています。

回答)
一般的に漆器店で天然漆を使っているかどうかを保証をする事は
出来ないと思います。(ここでは保証を厳密な意味として捉えています。)
通常、漆器店は販売のみで製造をしている訳では無いからです。
漆器店が厳密な意味で保証しようとすれば商品を破壊して検査するしかなく、
そのような事は漆器店では出来ません。
ここで言っている検査はサンプル検査ですが、それでも難しいです。
もっと厳密に考えれば全量検査が必要です。これは無理。
従って厳密な意味での保証はそれを作っている製造者でないとできません。

良い漆器を買うには良い製造者を選ぶ事が一番重要です。
とは言っても購入希望者との接点は小売店でもあるので
信頼のできる漆器店を選ぶのもポイントになります。

選ぶのは製造者であって産地ではありません。特に産地で選ぶと失敗します。
産地には幾つかの製造者がいますので、それぞれの営業方針が異なります。
観光客向けのお土産品を作る者、伝統を重んじて作る者、色々います。
本漆の漆器を買うのなら製造者で言うと、伝統工芸士や漆芸作家のものであれば
まあ、間違いが少ないかと思います。

信頼できる漆器店と言うと手前勝手ですが
当店(杉本商店)も候補に入れて下さい。(笑)
漆屋&工芸品店として作家ものを中心に取り扱っています。
主に当店の漆を買って頂いている作家さんの作品を扱っていますので
下地からちゃんと天然漆を使っているのは間違いないと思います。
でも、年中作家さんを監視をしている訳ではありませんから、
保証という意味では当店も絶対ではないんですね。

ともかく、下地から天然漆というと漆器の中では高価な方になりますから
より信頼のおける店、製造者を選ぶべきですね。
また、いいものを買いたいと思えば勉強も必要ですし、
足も使う必要があるのはどんな商品を買う場合にも当てはまる事ですから
それも重要です。いいものが簡単に安く手に入るような事はありません。
いいものの定義は人それぞれですが。

追記
漆器も個人名を出して売られているものの方が安心できます。
今では農作物でさえ”私が作りました。”と表示される時代ですからね。
あれと同じで、個人名を出しているものは何かあれば責任の所在は明確です。
従ってよほど悪い奴のものを掴まない限り間違いがありません。
変なものであれば、その人は後が無いですから。
たまに、ちゃんとやっているつもりの人がいるから厄介なのですが・・・

カシューを塗ったものは漆器と呼べるのか。2010年05月14日 12時29分57秒

ご質問)
カシューの木の樹液を利用したカシュー塗料というのがあります。
実際カシューの木もウルシの仲間らしいのですが、
はたして、このカシューを塗ったものは、漆器と呼べるのでしょうか?
漆器の定義を調べると、漆を塗った器など、とのことですが、
漆も何種類かあるかと思います。どこまでが漆に含まれるのでしょうか?

補足
カシューがウルシとは違う植物であることは、心得ておりますが、
カシューはウルシ科の植物との記述が、広辞苑など各種書籍に散見されます。
ウルシとは完全に一緒のものではないにしろ、ウルシの親類に当たる、
ウルシに良く似た塗料を用いたものは、“漆器”と呼べるのかどうか、
(根拠を含めて)そこが知りたいのです。


回答)
日本漆器協同組合連合会の
家庭用品品質表示法・雑貨工業品表示規定によると
全国漆業連合会の規定する漆を塗ったもの *1 を

品名 漆器
表面塗装の種類 漆塗装

と表示できるとあります。
全国漆業連合会の規定する漆は
ウルシ科ウルシ属植物の樹液とあります。

カシューはウルシ科ではありますが、
品名は合成樹脂塗料とありますし、
成分は××××、××、有機溶剤とありますので
漆と呼べるものではありません。
従って漆器とは言えないという事になります。

また、カシューには危険物第4類、第二石油類、危険等級Ⅲとある事も
付け加えておきます。

*1 添加剤も認めれられているが、昔ながらの材料がほとんど。
硬化剤は新しい材料であるが、最大でも10%を超えない事を求められている。

追記&補足
上記の回答では規定に”表面塗装の種類 漆塗装”とあるので
上塗りの話を前提で進めてしまいましたが、
ご質問者は上塗りを特に意識していたかどうか判らないので
以下に追記&補足致します。

日本漆器協同組合連合会の上記規定は表面塗装(上塗り)に関するものです。
つまり、中塗り、下地についてはこの規定は適用されません。
表面塗装(上塗り)が漆であれば漆器と言えるという事になります。
カシュー下地(ほかに渋下地、膠下地なども含む)で上塗りが漆であれば
漆器と表示できる事になります。

漆器のお椀を水に漬けたままにしてしまった結果、・・・2010年05月12日 18時00分41秒

ご質問)
漆器のお椀を水に漬けたままにしてしまった結果、
漆器の表面に亀裂ができてしまいました。
修理するにはどうしたらよいでしょうか。

回答)
漆器のお椀を水に漬けたままにして、表面に亀裂ができたとの事ですので
実際はかなり深いレベルまで亀裂が入っていると思われます。
(たぶん、下地レベルまで亀裂が入っています。)
従って専門家に修理を依頼するのが良いでしょう。

この亀裂が深いレベルと考える理由はお話の内容から
木地(木材)が吸水して膨張した為、塗りと木地の間に
歪が生じて亀裂が発生したと思われるからです。

お椀制作の工程は簡単に言うと、
木地、下地(塗り)、中塗り、上塗りとあり、
通常、下地(塗り)、中塗りの工程は数回行われます。
また、亀裂の状態に応じて追加の工程も施す必要があるので
この工程を正確に行うには専門家に任せた方が間違いがありません。
素人がやると、すぐにまた亀裂が発生するという事が良くあります。

絵漆に弁柄を使う理由(Yahoo!知恵袋の補足)2010年05月07日 14時03分06秒

Yahoo!知恵袋で表題の様な質問があったので
回答していたのですが、言葉足らずで上手く伝わっていない議論の最中に
投稿の期限が来てしまい追記が出来ないのでここで再掲します。

知恵袋での回答の中で私は弁柄を絵漆の中に入れるのは
(簡単に言うと、)弁柄の比重が重いため、結果として金が無駄になりにくいと表現しました。

やりとりの詳細は以下のURLでご確認下さい。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1040027215

自分の表現が良くなかったのだとは思いますが、
比重という部分が強調されすぎて誤解されているようです。
言いたかった事は以下の通りです。

イメージの方が判りやすいと思いますので記述しますが、

穏やかな(濁りのない)湖の浅瀬の砂浜で金属を落としたとします。
(比重は水<砂<金属とする。)

1)すると、金属はどこに存在する事になるかと言うと、
  →金属は砂の上(水の下)に存在する事になります。
    ちなみに、この時の比重は砂<金属ですが、金属は砂の下には埋まりません。
    比重の低いものの方に流動性がある場合には比重が重いものが下になりますが、
    (例外もあります。水に浮く船など。浮力などのせい。)
    そうでなく安定している場合は比重が大きくても下にならない場合があります。
    (金属粒子が砂の粒子より細かい場合は潜りますが、
     この場合は特殊な例として除く。)

2)では、1)の時の水の層が薄いとどうなるでしょう?
  →金属の厚みより水の厚みが薄ければ水の上に金属の一部が顔を出します。

3)では、1)の時の水の層が厚いとどうなるでしょう?
  →金属は水底の奥深くに沈んでしまいます。

4)前提条件が違ってきてしまいますが、もうひとつ判りやすくするための例として
  波などで砂が舞い上がり濁った状態の所に金属を落とし、
  濁りが無くなった状態になったら金属はどうなるでしょう?
  →金属は砂の下に沈みます。

振り返って(研ぎだし蒔絵以外の)蒔絵の技法を見てみます。
(研ぎだし蒔絵はあえて沈めるので除外。)
(上記の例1)~4)の水を漆、砂を弁柄、金属を金粉と置き換えて下さい。)

①弁柄を入れた(絵)漆で下絵を付け、
②表面が半乾きになるまで待ち、
③金粉を蒔く。

弁柄の比重は漆に比べてかなり大きいので早く弁柄が沈下します。
従って②の段階は穏やかな湖の浅い砂浜に該当した状態になります。
この時の絵漆が2)の状態になるような配合で作ってあったとします。
そこに金を蒔きます。そうすると、金粉は漆の上に顔を出しますね。
これが、絵漆に弁柄を入れる理由だと言いたかったのです。

絵漆の要件として(細い線が描けるよう、漆の)流動性をなくす事や
金粉を接着させるだけの厚みが必要というのもあり
(ちなみに、漆は厚く塗るとチジレが発生します。)、
弁柄を混ぜる事でこれを実現できていますが、弁柄である必要は無いと思われます。
昔からある顔料だから使われている感があると思います。


pandagratinさん、borislissさん、私の言いたかった事は伝わりましたか?
もし、まだ不明の点などありましたらコメントなり何なりして下さいね。
第三者に物事を正確に伝えるのは難しいですね。
どうしても自分の頭の中にある事は当たり前の事として飛ばしてしまうので
上手く伝えられずにすみませんでした。
中間の説明を飛ばしてしまったのが誤解の元でした。
比重という言葉は漆と弁柄の間で使われるべきものでした。

お二人とも興味をお持ちの様ですから、是非、感想・返信を下さいね。
(お二人をご存じの方は是非ここを紹介して下さい。)

pandagratinさん、私は業界のものとして納得いかないものが
ベストアンサーになるのはどうしても気に入りません。
この内容で良ければ再度回答しますので前回の質問を削除して
再質問して下さい。その際はご連絡を宜しくお願い致します。


参考)
  絵漆・・・蒔絵の基礎に使われる漆のこと。蒔絵の下絵を付ける為の漆。
        漆絵に用いる彩色用の顔料を混ぜた漆は色漆、練り漆などという。