漆器等の修復について ― 2006年06月14日 11時11分11秒
漆器の修復などを依頼される前にお客様自身に考えておいて頂きたい
事について記述します。
修復をご希望される方はその品に対する思いがあるから依頼される訳で
そのお気持ちをちゃんと反映した形で修復をする必要がある事、
修復する品の損傷などの状態が千差万別である事、
修復する品自体の製作工程が多くある事 *1、などにより
漆器の修復というものはお客様が考えるほど簡単に論ずる事はできません。
その事を予めご理解頂いた上で以下の事を考えて頂く必要があります。
1)まず、修復する物がどの程度の価値があるものかを認識する必要があります。
大きく分けて2種類。①文化財的なものなのか、②そうでないのか。
当然ながら文化財的なものは当店などに持ち込んで頂いても
修復を承る事はできません。
上記①の場合は文化財的なものの修復機関のご紹介で当店の役目は
終わりますので、以下、上記②の場合について述べていきます。
2)修復をする目的について考えておく必要があります。
修復の目的として以下の区分が考えられます。
③機能修復
④短期の美観・機能修復
⑤長期の美観・機能修復
③はお椀であるならば、ベースとなる基胎(お椀の場合は通常木材)の損傷を
修復した上で、お椀としての(お味噌汁を飲むなどの)基本機能を満たす
程度の修復となります。
④及び⑤は③に加えて美観も考慮した修復になるのですが、
漆が時間と共に変化(特に色)していく性質を持つので
短期と長期に分けて修復を考える必要が出てきます。
短期の場合は部分修復的なもので修復時点で色などが合うようにするので
長期的には修復部分とそうでない部分で色などが異なってきてしまい
修復した事が判るようになってしまいます。
長期の場合はその様な事が無いように全面的な塗り直しなどを行います。
3)美観も含めた修復(④及び⑤)については個人の考え方が
非常に重要であるにも関わらず、第三者に伝える事が困難ですので、
依頼者は具体的に詳細にやりたい事を表現し伝える必要があります。
最初の段階で間違いがあると見積り等に影響大ですし、
後々トラブルとなる可能性がありますので充分な注意が必要です。
その上で技術的に困難な場合や詳細な打合せが必要な場合などは
随時お客様と修復者との間で連絡を取り合う形となります。
4)修復の予算をどの程度掛けるつもりがあるか考えておく必要があります。
費用については実際問題としては現物を見ての見積もりとなるのですが、
修復については相互のディスカッションが非常に重要であるためご予算は
はっきりと告げて頂いた方が良い修復 *2 をする為のコツになります。
ちなみに蒔絵や漆絵の部分に影響の無い場合の③や④の場合の修復は
一般的に2万円から *3 となり、状態によってそれより前後します。
(大括りの修復1箇所当り@20,000-)
従って最低でも2万円は掛ける覚悟がないとプロに修復は頼めません。
5)修復の期間を考えておく必要があります。
修復に掛けられる時間は修復において重要な要素となります。
漆は天候によって乾くスピードが異なる事と乾いてからでないと
次の工程に進めない事から期間が短い場合は技法そのものの
選択余地も狭まる場合があります。
少なくとも1ヶ月は期間を考える必要があります。
追記
漆器の修復は電気製品にみられる修理とは異なります。
全てがそうとは言いませんが、電気製品の修理はユニットの交換が
主になります。つまり、悪いと思われる部分全体を丸ごと交換する手法です。
この場合、修理の段階において不具合の原因を解析し、
そこの部分に手を加える事はありません。*4
一方、漆器の修復においては交換という手法が使えない為、
原因の解析と解析に基づいた修復を行った後に改めて塗り直しをするという
イメージですので時間が掛かります。
この時間が掛かるという部分が修理費用に影響を与えます。
*1 ○×塗りと△□漆器とかは最終的(上塗りという)には漆を塗るのですが
その前工程(特に下地の工程)は産地毎に色々な技法があります。
*2 漆器の製作工程が多くある事からもお判りの様に、修復においても
費用的に安く済む簡易的な方法から本格的な方法まで多くの技法があります。
従ってご予算をお告げ頂く事は修復者からもご提案が出来る事になり、
仕上がりや費用で最善と考えられるやり方を探る事ができます。
*3 お客様が修復を依頼される時点では一般的に木製品(漆器)としては
かなり症状が悪化した状態になってから持ち込まれる場合が多く、
その場合の修理費用になります。
基胎(木材)が見えたり、歪んでいる状態はかなり重症です。
特に水気の多い場面で使われるものは基胎(木材)が見えたら
使用せずに直ぐに修理に出す事をお勧め致します。
*4 修理品をお客様に返却した後で交換したものを原因解析する事はあります。
その場で原因を解析し手を加える場合もありますが、
その場合、かなりの費用が発生する事は皆様もご存知かと思います。
事について記述します。
修復をご希望される方はその品に対する思いがあるから依頼される訳で
そのお気持ちをちゃんと反映した形で修復をする必要がある事、
修復する品の損傷などの状態が千差万別である事、
修復する品自体の製作工程が多くある事 *1、などにより
漆器の修復というものはお客様が考えるほど簡単に論ずる事はできません。
その事を予めご理解頂いた上で以下の事を考えて頂く必要があります。
1)まず、修復する物がどの程度の価値があるものかを認識する必要があります。
大きく分けて2種類。①文化財的なものなのか、②そうでないのか。
当然ながら文化財的なものは当店などに持ち込んで頂いても
修復を承る事はできません。
上記①の場合は文化財的なものの修復機関のご紹介で当店の役目は
終わりますので、以下、上記②の場合について述べていきます。
2)修復をする目的について考えておく必要があります。
修復の目的として以下の区分が考えられます。
③機能修復
④短期の美観・機能修復
⑤長期の美観・機能修復
③はお椀であるならば、ベースとなる基胎(お椀の場合は通常木材)の損傷を
修復した上で、お椀としての(お味噌汁を飲むなどの)基本機能を満たす
程度の修復となります。
④及び⑤は③に加えて美観も考慮した修復になるのですが、
漆が時間と共に変化(特に色)していく性質を持つので
短期と長期に分けて修復を考える必要が出てきます。
短期の場合は部分修復的なもので修復時点で色などが合うようにするので
長期的には修復部分とそうでない部分で色などが異なってきてしまい
修復した事が判るようになってしまいます。
長期の場合はその様な事が無いように全面的な塗り直しなどを行います。
3)美観も含めた修復(④及び⑤)については個人の考え方が
非常に重要であるにも関わらず、第三者に伝える事が困難ですので、
依頼者は具体的に詳細にやりたい事を表現し伝える必要があります。
最初の段階で間違いがあると見積り等に影響大ですし、
後々トラブルとなる可能性がありますので充分な注意が必要です。
その上で技術的に困難な場合や詳細な打合せが必要な場合などは
随時お客様と修復者との間で連絡を取り合う形となります。
4)修復の予算をどの程度掛けるつもりがあるか考えておく必要があります。
費用については実際問題としては現物を見ての見積もりとなるのですが、
修復については相互のディスカッションが非常に重要であるためご予算は
はっきりと告げて頂いた方が良い修復 *2 をする為のコツになります。
ちなみに蒔絵や漆絵の部分に影響の無い場合の③や④の場合の修復は
一般的に2万円から *3 となり、状態によってそれより前後します。
(大括りの修復1箇所当り@20,000-)
従って最低でも2万円は掛ける覚悟がないとプロに修復は頼めません。
5)修復の期間を考えておく必要があります。
修復に掛けられる時間は修復において重要な要素となります。
漆は天候によって乾くスピードが異なる事と乾いてからでないと
次の工程に進めない事から期間が短い場合は技法そのものの
選択余地も狭まる場合があります。
少なくとも1ヶ月は期間を考える必要があります。
追記
漆器の修復は電気製品にみられる修理とは異なります。
全てがそうとは言いませんが、電気製品の修理はユニットの交換が
主になります。つまり、悪いと思われる部分全体を丸ごと交換する手法です。
この場合、修理の段階において不具合の原因を解析し、
そこの部分に手を加える事はありません。*4
一方、漆器の修復においては交換という手法が使えない為、
原因の解析と解析に基づいた修復を行った後に改めて塗り直しをするという
イメージですので時間が掛かります。
この時間が掛かるという部分が修理費用に影響を与えます。
*1 ○×塗りと△□漆器とかは最終的(上塗りという)には漆を塗るのですが
その前工程(特に下地の工程)は産地毎に色々な技法があります。
*2 漆器の製作工程が多くある事からもお判りの様に、修復においても
費用的に安く済む簡易的な方法から本格的な方法まで多くの技法があります。
従ってご予算をお告げ頂く事は修復者からもご提案が出来る事になり、
仕上がりや費用で最善と考えられるやり方を探る事ができます。
*3 お客様が修復を依頼される時点では一般的に木製品(漆器)としては
かなり症状が悪化した状態になってから持ち込まれる場合が多く、
その場合の修理費用になります。
基胎(木材)が見えたり、歪んでいる状態はかなり重症です。
特に水気の多い場面で使われるものは基胎(木材)が見えたら
使用せずに直ぐに修理に出す事をお勧め致します。
*4 修理品をお客様に返却した後で交換したものを原因解析する事はあります。
その場で原因を解析し手を加える場合もありますが、
その場合、かなりの費用が発生する事は皆様もご存知かと思います。