こんなところに... ― 2006年09月06日 11時11分11秒
紀子様、親王殿下のご出産おめでとうございます。
親王殿下の健やかなるご発育と紀子様のご健康をお祈り申し上げます。
さて本題。
こんなところに..漆の本があるなんて。
佐々木英著、漆芸の伝統技法が近くの”いずみ書店/南口店”にありました。
昔、近くが塗師町だったからか?
近くに杉本商店があるからか?(笑
ともかく、当店で同著を見ていただいて、
気に入ったらすぐに”いずみ書店”で買える訳です。
漆芸の本は神保町の三省堂本店でさえもほとんど置いてないですから、
大変な驚きでした。
という事で、皆さん、本は”いずみ書店”で買いましょう!!!(笑
昨晩見つけて思わずご報告。
いずみ書店データ
東京都千代田区鍛冶町2-1-3 (JR神田駅南口すぐ)
でんわ 03-3254-8521
漆を理解するために。 ― 2006年08月11日 11時11分11秒
そうすると直感的に判りやすい為だが、その場合に多く使うのは
”漆は人間の血と同じ。”とか”漆(塗膜)は人間の皮膚と同じ。”という表現だ。
”漆(器)は木そのものである。”とかいうのも比喩ではないが良く使う。
例えば漆が固まるのは”漆は人間の血と同じ。”だからだし、
漆は呼吸しているのは”漆(塗膜)は人間の皮膚と同じ。”だからだ。
また、漆が埃に集まるのは異物に集まって攻撃する白血球の様だし、
その盛り上がりはかさぶたの様だ。
”漆(器)は木そのものである。”からピカピカしている漆器は変だし、
”漆(塗膜)は人間の皮膚と同じ。”様に呼吸しているのだから
漆器を水に長時間浸けてはいけないのだ。
”漆(器)は木そのものである。”のだから電子レンジに入れてはいけない。
”漆(塗膜)は人間の皮膚と同じ。”なのだから硬い物でこすれば傷がつく。
”漆は人間の血と同じ。”だから抗菌効果がある。
上記の3語は漆の本質を理屈ぬきに心の奥底にすーっと収めるのに
非常に便利な言葉だ。
漆が乾かない場合の確認事項 ― 2006年08月04日 11時11分11秒
以下のどれかに該当していると漆が乾かない場合があります。
1)温度、湿度が合わない。
一般的に漆の乾きやすい温湿度は20℃・80%程度と言われておりますが、
その幅はかなりあるので現代において人が実際に生活している部屋に
置かれた室で乾燥させている場合はこれが原因とは考えにくいです。
ただ、室の作りの問題で湿度が逃げやすい場合など低湿度となる
場合においては漆の乾燥が遅くなる傾向にあります。
漆の乾く温湿度のうち、温度は人間の快適範囲なので室の密閉性が
悪くても乾くのですが、湿度は人間の不快範囲なので室の密閉性が
悪いと外気との交換により80%程度の湿度維持ができない為です。
2)油脂が付いたところに漆を塗った。*1
漆は不乾油(植物油や皮脂など)のついた所に塗ると乾きません。
また、不乾油を混入した場合も同様です。
特に漆刷毛を使う前は油を確実に落としてからご利用下さい。
不乾油とは長時間放置しても乾燥しない油(植物油など)の事で
片脳油、ガムテレピン油などは不乾油ではありません。
3)塩分が付いたところに漆を塗った。*1
漆は塩分のついた所に塗ると乾きません。
また、塩分を混入した場合も同様です。
海の貯木場で保管され、脱塩処理(?)されていない木に漆を塗ると
乾きません。木材から加工される場合はその素性にも注意が必要です。
4)上記2)、3)以外の漆が乾かない成分を含む素材に漆を塗った
もしくは混入した。*1
5)ラッカーゼ(酵素)が死んだ漆を塗った。
漆はラッカーゼという酵素の働きで重合反応を起こし乾きます。
従ってこのラッカーゼを殺すと漆は乾かなくなります。
ラッカーゼは高温、低温環境下で死んだり活性が低下します。
6)2層に分離した漆の上澄みを塗った。
精製漆は遅かれ早かれ時間の経過と共に2層に分離します。
上層は乾かない成分(軟質)、下層は乾く成分(硬質)ですので
(保管状態にもよりますが)2層に分離した漆を意識せず取り出すと
上層(軟質)部分のみ使ってしまう場合が往々にしてあります。
この場合、その漆は乾かないことになりますので
上層と下層を同量取り出して練り直す必要があります。
この練り直しをすれば元の漆(乾く漆)に戻ります。
7)購入後、非常に時間が経った漆を塗った。
漆は生ものですので、ご購入後できるだけ早めにご利用下さい。
冷暗所に保管した場合、概ね以下の期間はご利用が可能ですが
段々と漆の乾きが悪くなっていきます。
高温や低温の場所で保管すると乾きが悪くなるのが早くなります。
特に夏場の保管方法によって利用可能期間が変わる印象があります。
(上記5)と関連していると推測されます。)
生漆・生正味・・・約1年
上記以外の精製漆・・・約2年
(呂色、木地呂、塗立、朱合、梨子地、中塗など。)
*1 この状況は意識外で生じる場合が往々にしてあるので
他の漆も塗ってみて他の漆が乾くようであれば
乾かない漆に問題がある可能性があります。
但し、当店の漆と他の漆を比較する場合は
他の漆に揮発性物質が多く混入されていない事が前提です。
(当店の漆には揮発性物質は混入していません。)
カシュー漆や新漆といわれるものの中には揮発性物質が多く含まれており、
その乾き方はペンキなどと同じ気乾です。
(その様な漆には取扱上の注意が書かれている場合が多い。)
この場合、両者の乾く原理が全く違うので比較の対象としては
意味をなしません。
漆の抗菌力 ― 2006年07月27日 11時11分11秒
漆には抗菌力があるようです。
株式会社ファルコライフサイエンスの調べによると以下の通りの結果が出ました。
大腸菌やMRSA(黄色ブドウ球菌)は4時間後に半減し、
24時間後にはゼロになるそうです。
菌がゼロにならなくても少量の菌ならば
人間の抵抗力によって問題ない事を考えると
漆においては菌の増殖がない事が非常に意味のある事だと思えます。
やはり、漆は木の血液だということですね。
時間 | 1時間 | 2時間 | 4時間 | 6時間 | 24時間 | |
MRSA (黄色ブドウ球菌) |
対照 | 11,000 | 12,000 | 19,000 | 22,000 | 2,400 |
うるし | 13,000 | 8,000 | 1,700 | 0 | 0 | |
大腸菌 (O157を含む) |
対照 | 1,200 | 1,600 | 780 | 1,000 | 600 |
うるし | 2,600 | 300 | 120 | 16 | 0 | |
サルモネラ | 対照 | 7,000 | 7,500 | 9,000 | 6,100 | 1,100 |
うるし | 3,000 | 2,300 | 310 | 40 | 0 | |
腸炎ビブリオ | 対照 | 1,100 | 780 | 740 | 650 | 6,000 |
うるし | 12 | 0 | 0 | 0 | 0 |
被検材料
塗料塗膜(うるし)
コーティングプラスチック50mm×50mm
使用培地
●SCDLPブイヨン培地:栄研化学
●クロモカルトコリフォーム寒天培地:メルク
●卵黄加マンニット食塩寒天培地:BD
●MLCB寒天培地:日水製薬
●TCBS寒天培地:日水製薬
試験菌株
●Staphylococcus aureus(MRSA)ATCC25922
●Escherichia coil(大腸菌)IFO3301
●Salmonella Enteritidis(サルモネラ)IFO3313
●Vibrio parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)食品分離株
実験方法
1.菌液の調整
試験菌株を血液寒天培地で35℃、24時間培養後、
発育集落を血液寒天培地に接種し、35℃、24時間培養後、
500倍希釈SCDLPブイヨンで1000000CPU/mlに調整したものを菌液とした。
腸炎ビブリオは3%食塩加500倍希釈SCDLPブイヨンで1000000CPU/mlに
調整した。
2.試験操作
被検材料を24時間紫外線照射後、滅菌シャーレに入れ、
菌液0.5mlを滴下し、減菌ストマッカーポリ袋を15mm×45mmに切断した
フィルムで被覆(フィルム密着法)し、30℃で静置した。
1,2,4,6,24時間後、フィルムに付着している菌をSCDLPブイヨン9.5mlで
十分に洗い出した後、その生菌数を測定した。
対照として、抗菌塗膜されていないプラスチック50mm50mmを
同様に試験した。
3.生菌数の測定
洗い出し液の原液、10倍、100倍、1000倍希釈液100μlを、
MRSAは卵黄加マンニット食塩寒天、大腸菌はクロモカルトコリフォーム寒天、
サルモネラはMLCB寒天、腸炎ビブリオはTCBS寒天にそれぞれ接種後、
コンラージ棒で塗沫し、35℃、24~48時間培養後、発育集落数をカウントした。
備考
本文は雑記帳に掲載されていた内容に加筆などを加えて再構成したものです。
刻苧(こくそ)について ― 2006年07月08日 11時11分11秒
そこで簡単ながら刻苧について記述してみたいと思う。
刻苧を施す(刻苧掻いと言う)目的は、木地の傷や接合部を埋める事。
これを施す事により木地のしっかりした堅牢な漆器が出来上がる。
刻苧とは以下のものを言う。
刻苧・・・①糊漆に刻苧綿と木粉を適当に混合したもの。
②木粉の代わりに地の粉を混合したもの。
③奈良時代には抹香を麦漆に混合したもの。
糊漆・・・上新粉に水を加えて練り、加熱して糊状にしたものに漆を加えたもの。
(炊いたお米を磨り潰したものに漆を加える方法もある。)
麦漆・・・小麦粉に漆を加えたもの。
だし、木粉、地の粉、抹香はそのもの自体が漆材として手に入る。
あるものを練るだけじゃつまらないという事で
刻苧綿を作ってやろうと考え原料として麻そのものを用意した。
短く切って指先でよじると繊維がほぐれるのは知っていたが、
他の方法という事で、すり鉢を使ってみることにした。
結論を先に言ってしまうと、
麻を数mmに細かく切ってすりこぎすると繊維が細かくほぐれた刻苧綿が
出来る事がわかった。
(1cm前後に切ってやると繊維が絡み合い上手く細かくほぐれない。)