油の話2007年08月03日 11時11分11秒

今回は油について調べた結果を記述してみたい。
簡単に油と言ってしまうが、意外と奥が深い。
あまり深入りしない(嘘にならない)程度に書いていきます。

漆芸で油について考える際に必要な最低限の観点から油を区別してみる。
分け方としては大きく2つが考えられる。

①揮発するかしないか。
②固化するかしないか。*1
  (その後の状態で更に乾性油、半乾性油、不乾油に区分される。)

*1 ラードのように温度により固体になったり液体になったりするものは
  固化とは言わないようで、例えば、漆(液体)は乾かす時に湿度を与えるが、
  乾燥(湿度を奪う)しても液体には戻らないような固まり方を固化というようです。
  AからB、BからAに変化する際のパラメータ(上述のラードの場合、温度)が
  1つのもの(単純なもの)は固化と呼ばないようです。

具体的に挙げると以下の通り。
1)揮発油・・・・・片脳油 *2、テレピン油、ガソリンなど
2)乾性油・・・・・えの油、亜麻仁油、紅花油、向日葵油など
3)半乾性油・・・菜種油、コーン油、綿実油、胡麻油など
4)不乾油・・・・・椿油、オリーブ油など

*2 精油と呼ばれるものは揮発性のものを指し、片脳油はこれに属す。
  製造工程から考えると微量の残留残置物がある事が予測されるが、
  乾性油の残留残置物から見ると無視できる程度。

備考)油の区分についてWebサイトを見回すと菜種油を不乾油としているところや
    テレピン油は酸化により樹脂化するという書き方(=乾性油と思わせる表現)
    をしているにも関わらず、揮発性溶剤、精油とも書かれている場合がある。
    これらの違いが発生する原因は、次の2点が考えられる。
    乾性油か半乾性油か不乾油かを区別する時にヨウ素価で
    区別しているのが原因の1つ。これは同一名称の油であってもそれぞれの
    油の品質によってヨウ素価にばらつきがある事が原因と思われる。
    上質な菜種油は学術上からも不乾油と言えそうなヨウ素価であるので
    サイトによって区分の違いが生じるようだ。
    漆芸では実用上不乾油とみなせる事や価格の点で菜種油が使われる。
    漆芸の様な歴史の長い業界は実用上固まらない油(乾かない油)として
    使ってきたので、学術的に後付けで定義されたものと感覚的な
    ズレが生じる事がままあるので注意が必要となる。
    (当店でも菜種油は不乾油扱いだが、今回は学術区分で表記する事とした。)
    もう1つは環境条件にの違いによってその発現する性質が異なる事が原因。
    例えばテレピン油の場合、密閉されたビンの中に少しだけある場合は
    揮発はせずに酸化(樹脂化)のみ進むので乾性油扱いになり、
    開放空間中では揮発が先に進む為、揮発油扱いになるらしい。
    従って上記の区分も絶対のものではなく、諸条件により変わりうるもので
    通常の条件下での一般的な区分け程度に理解して欲しい。
    
揮発油・・・空気中に揮発して残留残置物のないもの。

以下は残留残置物があるもので、その状態により区別される。

乾性油・・・空気中で完全に固化するもの。
       液状では無くなるので揮発した様に勘違いしやすいが
       残留残置物があり、塗膜などになっている。
半乾性油・・・空気中で流動性は低下するが、完全には固まらない。
不乾油・・・空気中で固まらない。

この事から漆を薄める場合には残留残置物が無い揮発油か
空気中で完全に固化する乾性油を使う必要がある事が判る。
逆に漆の道具の処理には空気中で固まらず、油により漆が空気と
接触するのを遮断する不乾油を使う必要がある事が判る。

備考)固化の速度によっては乾性油、半乾性油も漆の道具の処理に使えるが、
    扱いにはより注意が必要になる。
    例えば、乾性油で道具を処理をしても固化する前に次の作業で
    再び使うのであれば実用上は問題無いと思われる。

追記
 どの油を使うにせよ初期の油の品質を保持する為には
 出来るだけ空気に触れないように量に合った容器に移し替えながら
 密閉をして冷暗所に保管する事が重要である。