漆の定義 ― 2009年07月07日 11時11分11秒
日本漆器協同組合連合会 *1 が改めて
家庭用品品質表示法・雑貨工業品表示規定の表示について
確認・通達を出した(2009.4.18の記事を参照願います。)のですが、
それに呼応して全国漆業連合会 *2 も改めて
『漆の定義』の連絡をして来ましたので以下にその内容を記載します。
たぶん、以前の定義と変更は無いと思いますがご参考まで。
なお、『漆の定義』は漆製品情報シートに包含されていますので
漆製品情報シート全体を以下に記載します。
------以下、製品情報シート原文。----------------
『漆の定義』
(漆の定義)
(1)ウルシ科ウルシ属植物の樹皮に傷を付けた時、
油中水滴型のエマルジョン *3 で分泌する樹液で常温で硬化するものをいう。
(2)その主成分の化学構造が、カテコール3の位置にC15、もしくはC17、
または4の位置にC17の直鎖アルケニル基が付いたもので、*4
他に水分、水溶性多糖類(ゴム質)、糖タンパク(含窒素酸化物)、
及び少量のラッカーゼで構成されているものをいう。
(3)その乾燥機構が焼き付けなどの人為的なものを除いて、
常温のもとで初期において酵素ラッカーゼの働きにより乾燥するものをいう。
(荒味漆及び濾上げ生漆)
荒味漆・・・漆液の定義にしたがい、樹木から採った状態のままの樹液をいう。
濾上げ生漆・・・荒味漆から樹皮やごみなどの夾雑物を取り除いたものをいう。
(精製漆の表示と定義)
(1)透無油精製漆 荒味もしくは濾上げ生漆を原料として分散(なやし)
脱水(くろめ)、濾過したものをいう。
(2)黒無油精製漆 荒味もしくは濾上げ生漆を原料として、例えば鉄などの
着色剤を加えて着色し、分散、脱水、濾過したものをいう。
(3)透有油精製漆 荒味もしくは濾上げ生漆に、天然の乾性油などや
天然の乾性油に天然のロジンなどの混合物を添加、
分散、脱水、濾過したものをいう。
(4)黒有油精製漆 荒味もしくは濾上げ生漆に、例えば鉄などの
着色剤を加えて着色し、天然の乾性油などや
天然の乾性油に天然のロジンなどの混合物を添加、
分散、脱水、濾過したものをいう。
(5)梨子地漆 (1)及び(3)に着色剤として天然のガンボージ(藤黄) *5 を加えて、
分散、脱水、濾過したものをいう。
危険有害情報
1.本品は「製造物責任法」の適用除外品である。
但し、顔料と練った場合(通称 「練漆」)は、加工品となるので、
顔料の安全データシートを取ること。
2.危険有害性なし。但し、体質により皮膚に付着した時かぶれる場合がある。
一般的注意事項
1.保存は高温多湿を避け、冷暗所で風通しの良いところに保存すること。
また、生活区域に近づけて置かない。
2.使用前は、底から良く撹拌の上使用のこと。
3.乾燥にあたっては、焼付けや戸外を除き雰囲気条件は
下記(低温時高湿、高温時低湿)が望ましい。
4.生漆については6ヶ月以上、精製漆については1年以上放置されたものについては、
乾燥が大幅に落ちている可能性があるので、できるだけ新しい漆と混ぜて使うこと。
5.耐候性がよくないので、紫外線に暴露されるところに塗る場合は
不適切であることを依頼先に充分説明のこと。
6.乾燥時、熱を発するので、特に漆を濾した濾紙や拭漆の拭き取った
布や紙などは乾燥するまで丸めたり固めて置かないこと。
温度が25℃以上、湿度が80%以上になった場合、自然発火する可能性が高くなるが、
低温低湿でも固めておいたり密閉しておくと自然発火することがある。
万一、火災が発生した場合は、消火に際しては、油用の消火器で消火すること。
かぶれに対する処置
1.漆が皮膚に付着した場合は、ただちにサラダ油などでよく拭き取ること。
2.目に入った場合はただちに水でよく洗浄し、専門医に診てもらうこと。
3.漆に触れる前からかゆみを感じる人は、ただちに使用を止めること。
4.かぶれがひどくなる前に、専門医に相談すること。
* この書類は漆液に関する製品情報であり、保証するものではありません。
また、通常もしくは従来の使用方法を前提としています。
------以上、製品情報シート原文。----------------
注釈
*1 産地の漆器生産者組合の連合体
*2 漆や漆材などの生産者の連合体
*3 牛乳は水中油滴型のエマルジョン。相当時間が経過すると
牛乳が分離(ヨーグルトと乳清)するように、漆も分離する。
この事が一般的注意事項2.につながる。
*4 この違いが漆の主成分の違いに相当し、日本産や中国産はウルシオール、
ベトナム台湾産はラッコール、ミャンマー産はチチオールとなる。
*5 石黄(せきおう)、雌黄(しおう)とも言う。
杉本商店では
濾上げ生漆を 生正味漆(日本産)生漆or瀬〆漆(中国産)、
(1)透無油精製漆を 木地呂漆(日本産、中国産共通)、
(2)黒無油精製漆を 呂色漆(日本産、中国産共通)、
(3)透有油精製漆を 上朱合漆(中国産)
(4)黒有油精製漆を 塗立漆(中国産)
(5)梨子地漆を 梨子地漆(日本産、研出用)
と呼んでいます。
当店の解説(推測を含む)
漆の定義でお判りのように、漆は昔からのものである為、
原材料は全て天然素材となっています。
これが漆が環境に優しい塗料である根拠なのです。
環境に優しいと言う事は当然ながら人間にも優しい。
加えて2006.7.27の記事にもあるように、漆には抗菌力があります。
皆様には是非このメリットを利用して頂きたいと思います。
一般的注意事項4.は漆を再活性化できるという事を意味しています。
新しい漆のようにはなりませんが、試してみる価値ありです。
一般的注意事項5.に”耐候性がよくないので”とありますが、
耐候性には風雨、気温変化なども含まれますから適切な表現ではありません。
あえて言うなら”耐光性”、特に紫外線に弱いのが漆です。
誤解を防ぐ意味で”耐候性がよくないので”という部分を削除して読んで下さい。
(上記では原文を重視した為、残しておきました。)
ご注意)
記載内容や当店の解説について誤りがあった場合は随時書き換えを
行いますので、本ブログを参考とされる場合は最新のものを確認されるよう
お願い致します。
家庭用品品質表示法 ― 2009年04月18日 11時11分11秒
(経済産業省のページより抜粋。)
(16)漆又はカシュー樹脂塗料を塗った食事用、食卓用又は台所用の器具
ア)対象となるものは、木製及び合成樹脂製のもので漆又はカシュー樹脂塗料や
メラミンアルキド樹脂、ユリアアルキド樹脂、ウレタン樹脂等を塗ったものです。
イ)「品名」
・漆器-表面の塗装に天然の漆のみを使用したものは「漆器」と表示します。
・合成漆器-表面の塗装に天然の漆以外のものを一部でも使用したものについて
「合成漆器」などの適正な用語を用いて表示します。
ウ)「表面塗装の種類」は、その塗装の種類の名称を示す用語を
用いて適正に表示します。
2種類以上の表面塗装を行っている場合は、その塗装部分ごとに
部分の名称とそこで使われている塗装の種類を表示する必要があります。
下地塗装を行っているものについては、「下地塗装」の用語と括弧書きで
その塗装の種類を表示します。
エ)「素地の種類」は、器具の主な部分に使用されている素地の種類の名称を
用いて適正に表示します。また、合成樹脂を使用したものにあっては、
合成樹脂加工品品質表示規程に準じて合成樹脂の種類を表示します。
オ)「使用上の注意」は、使用方法、使用後の手入れ方法及び保存方法について
製品の形状又は品質に応じて適切に表示します。
また、表示は下げ札の取り付け、刻印、ラベルの貼り付けなど本体から
容易に離れない方法で表示することとなっています。
なお、一部の製品(大きさ、形状が一定の面積以下)については、
一部の表示(表面塗装の種類及び素地の種類)に限定して
表示することができます。
当店のコメント
この表示は本来、生産者がつけるべきものではありますが、
当店が扱う商品の多くは作家さん(=個人)が作品を
創作しているという現状を鑑み、当店が本表示に関わる
内容をヒアリングをした上で店頭での表示をしています。
(但し、仕入が古いものについてはこの限りではありません。)
また、この表示を当店が漆器に貼りつける事については
作品を損なう恐れや責任の所在が曖昧になるなどの観点から、
実施しない事としていますのでご理解下さい。
感想
家庭用品品質表示法には陶器の記述がない。
どうみても用途的に漆器に近いのだがどうして?
縦割り行政が原因?土鍋から鉛が溶出した事もあったのに。
情報をお持ちの方は教えて下さい。
日本漆器組合連合会の表示規定 ― 2009年04月16日 11時11分11秒
決定事項というものが見つかったので掲載します。
ちなみに、日本漆器組合連合会とは漆器製造業者(社)の団体で
漆製造に関しては全国漆業連合会という別組織があります。
ここ規定される『漆の定義』は後日掲載します。
一見、同じ事を定義しあっているように見えますが、
漆を作って売る者(漆屋)とそれを買って木地に塗り漆器にする者
(漆器製造業者)が分かれている為にそれぞれで定義する必要がある訳です。
つまり、漆屋から漆器製造業者が(漆屋の規定する)漆を買ったとしても
漆器製造段階で添加物を加える場合があるので漆器製造業者でも
漆と表現できるものについて再規定しているのです。
では、日本漆器組合連合会での漆の規定です。
家庭用品品質表示法・雑貨工業品表示規定の表示に関連して
規定されています。
------以下、日本漆器組合連合会での漆の規定。----------------
1.家庭用品品質表示法を遵守すること。
2.
①漆に、着色剤(鉄、顔料等)、乾性油(亜麻仁油、荏油等)、
天然の補助剤(ロジン、コーパル等)やその他の補助剤(粘度調整剤*1、
硬化剤*2)を加え塗装したものは、漆塗装と表示できる。
ただし、硬化剤の量は必要最小限になるよう各社が企業努力し、
硬化剤の配合上限量は漆に対して10%以内とする。
*1 粘度調整剤とはテレピン油、ショウノウ、灯油等の揮発性有機溶剤をいう。
*2 硬化剤とはポリイソシアネート等をいう。
品名は、漆器、表面塗装の種類は漆塗装となる。
②漆に合成樹脂塗料を混入(数パーセントでも)したものは、
漆塗装と表示することはできない。
品名は合成漆器・木製容器・塗り加工品等となり、表面塗装の種類は、
漆と合成樹脂塗料の混合塗装(例:漆とウレタン樹脂塗料の混合塗装等)となる。
③「新漆塗装」の名称は商品名であり、一般名称ではなく、かつ、
漆塗装であるかの誤認を消費者に与える恐れがあり
この用語の使用を認めないものとする。
3.上記のうち、②の漆に合成樹脂塗料を混入した場合の表示は次の通りとする。
漆の比率が50%以上の場合は、漆と合成樹脂塗料名の混合塗装とする。
(漆の比率を付記すること)
漆の比率が50%未満の場合も、合成樹脂塗料名と漆の混合塗装とする。
(漆の比率を付記することが出来る)
------以上、日本漆器組合連合会での漆の規定。----------------
当店の解説(推測を含む)
2.については昔から添加物として使われていたもの(つまり、天然素材)は
OKということ。
硬化剤のポリイソシアネート等は最近の添加物だが、漆器製造工程上
必要などの判断から配合上限量を設けて許しているようだ。
3.は表示の順番を言っているのであるが、漆と合成塗料という
2つに分けた観点で書かれている。
たぶん法的には漆の割合が45%で合成塗料Aが30%、
合成塗料Bが25%の場合、漆、A、Bの表記順になるのであるが、
天然塗料と合成塗料という部分に焦点を当てて
合成塗料(A、B)55%、漆45%と表記しなさいということだろう。
あと、重量比か容積比か明示されていないが、趣旨からして
漆の比が小さくなる方で表示するのが適切だと思う。
ご注意)
記載内容や当店の解説について誤りがあった場合は随時書き換えを
行いますので、本ブログを参考とされる場合は最新のものを確認されるよう
お願い致します。
砥粉の成分分析(白・黄・赤の違い) ― 2008年09月17日 11時11分11秒
砥粉には白・黄・赤という色から区別した区分がありますが
実際に何が違うのか気になり問い合わせてみました。
その結果が下表の通りです。
このデータは分析結果ですので、いつでもこの成分割合という訳ではありません。
毎度のことですが、漆と同じく砥粉も基本的には自然の産物です。
その点、予めご了承の程お願い申し上げます。
なお、従来の使い分けはあくまで木肌の色で決まるようですので、
春慶塗のような木肌の色を見せる仕上げの場合は意識する必要がありそうです。
| 成分 | 白砥粉 | 黄砥粉 | 赤砥粉 |
| シリカ(二酸化珪素) SiO2 | 77.56% | 60.58% | 63.12% |
| アルミナ(酸化アルミニウム) Al2O3 | 10.20 | 18.02 | 17.42 |
| 酸化第二鉄 Fe2O3 | 3.17 | 7.90 | 8.69 |
| 酸化カルシウム CaO | 0.22 | 0.22 | 0.22 |
| マグネシア(酸化マグネシウム) MgO | 0.95 | 2.06 | 0.95 |
| 強熱減量 | 3.10 | 6.28 | 5.53 |
以下はあくまで上表とネットで検索した結果からの推測ですが、
 赤色~黄色は遊離酸化第二鉄の色だそうですので
酸化第二鉄の含有量が主に砥粉の色に影響しているようです。
ちなみに、強熱減量とは500~600℃で熱した場合に生じる
重量減少量(割合)のことのようです。
後日記
漆工界では砥石を削って造られたものを特に砥石粉と言っています。
従って、ここで言う砥粉は黄土を焼いて粉にしたものになります。
ちなみに、輪島地の粉も珪藻土の一種の黄土を蒸し焼きにし粉砕した
粉末との事ですので、砥粉と地の粉には黄土繋がりがみて取れます。
金箔の規格 ― 2008年07月27日 11時11分11秒
金箔も昔からの素材なので厳密な規格かどうか判りません
(産地などにより若干数値が変動すると思います)が
知っていて損は無いと思いますので、ご参考までにお読み下さい。
余談ですが、漆芸には3枚掛程度のものを使わないと扱いが困難なようです。
(”重量=厚さ”と考えて下さい。)
・号色について
金の含有率によって決まるものです。
概要は下表の通りです。
当然ながら、金の含有率が高いものほど高価になります。
| 号色 | 金の含有率 |
| 1号色 | 97.647% |
| 2号色 | 96.699% |
| 3号色 | 95.769% |
| 4号色 | 94.407% |
・枚掛について
1000枚の箔の重量によって決まるものです。
概要は下表の通りです。
当然ながら、重量の重いものほど高価になります。
| 枚掛け | 重量 |
| 3枚掛 | 22.5g |
| 2枚掛 | 22.5~21g |
| 1枚掛 | 19~17g |
| 上箔 | 16.5g以上 |
・寸法について
金箔の寸法を直接測るのは困難なので外装の寸法になりますが、
紙で包んであるだけですので外装の寸法がほぼ金箔の寸法だと思います。
金箔の寸法:約11.7×約11.7cm。