漆の定義(個人的見解) ― 2005年10月17日 11時11分11秒
漆の定義(個人的見解)について考えてみた。
前にも述べたとおり、漆自体は定量的定義が困難であるので
そちらの方向ではなく、漆に加えるものの方から見てみた。
漆には大きく分けて生漆と精製漆に分けられるが、
精製漆をもう少し細かく見ると、漆に物理的、化学的操作をしたものと
それに加えて添加物を加えたものがある。
ここで問題になると思われるのが添加物である。
漆に物理的、化学的操作をしたものは外界からの力によって
漆自体が変わったものなので根本的には漆の性質を持ち続けている。
(=砂糖が加熱によってカラメルになるようなもの。)
では添加物を加えるとどうか?これは正に漆化合物である。
(=2液型接着剤で混ぜると固まるものがあるがそんな感じ。)
化合物は加えられたものの影響を少なからず受ける。
この影響が使う人にとっていい方向なら問題ないのであるが、
(注 使う人とは生産者、漆器の製作者でなく、漆器の最終消費者のこと。)
それでも漆だと言えるかどうかというと疑問が残る。
漆への添加物は一般的には油(樹脂)であるのでそれで考えてみる。
油には3種類あって植物性(菜種油など)、動物性(ラードなど)、
鉱物性(灯油など)のものがある。
このうち動物性の油は基本的に常温で固体なので漆には使えない。
(ちなみに鉱物性油も揮発性が高いものが多く漆には使えないものが多いが
原油精製物の中にはそうでないものもあるのでここでは残しておく。)
従って議論は植物性と鉱物性になるのだが、
漆器が食器であると考えると鉱物性のものは遠慮したい気になる。
植物性の油で揚げたから揚げや天婦羅は食べる気がするけど、重油で揚げた
から揚げや天婦羅は食べる気がしない。
これで漆に加えていい油は植物性という事に絞られた。
ではこの油の配合割合は?
油の配合割合による化学的な影響度合いは私は判らないので常識的に考えた。
”(体積比で)50%以上が漆じゃないとね。”
至極普通の感覚。
という事で漆と呼んでいいのは(食器使う場合の厳しい定義ではあるけれども...)
”漆分が体積比で50%以上で、加える化合物は植物性油に限る。”
という結論になった。
漆屋の観点でもう少し厳密に言うと、”塗る段階で”という前置詞がつく。
揮発成分を混ぜて塗ると塗り上がりは揮発分がとんで漆分が100%近くになる。
でも塗膜の強さは全然違うので”塗る段階で”というのが重要になる。
後日追記
その後の調査の結果、実際問題として現在の漆産業において
漆の添加物として植物性油 *1 を使うのは色々な意味で難しいことの様だ。
(*1 植物の種子を絞ってという単純な工程で出来る油では無いという意味。)
当然ながら、それらの添加物は各種法令に基づき安全性に問題が無いことが
確認され、漆への添加が許可されたものであるようだ。
でも、もう少しこの添加物について調査し、今後ご報告したいと思う。
前にも述べたとおり、漆自体は定量的定義が困難であるので
そちらの方向ではなく、漆に加えるものの方から見てみた。
漆には大きく分けて生漆と精製漆に分けられるが、
精製漆をもう少し細かく見ると、漆に物理的、化学的操作をしたものと
それに加えて添加物を加えたものがある。
ここで問題になると思われるのが添加物である。
漆に物理的、化学的操作をしたものは外界からの力によって
漆自体が変わったものなので根本的には漆の性質を持ち続けている。
(=砂糖が加熱によってカラメルになるようなもの。)
では添加物を加えるとどうか?これは正に漆化合物である。
(=2液型接着剤で混ぜると固まるものがあるがそんな感じ。)
化合物は加えられたものの影響を少なからず受ける。
この影響が使う人にとっていい方向なら問題ないのであるが、
(注 使う人とは生産者、漆器の製作者でなく、漆器の最終消費者のこと。)
それでも漆だと言えるかどうかというと疑問が残る。
漆への添加物は一般的には油(樹脂)であるのでそれで考えてみる。
油には3種類あって植物性(菜種油など)、動物性(ラードなど)、
鉱物性(灯油など)のものがある。
このうち動物性の油は基本的に常温で固体なので漆には使えない。
(ちなみに鉱物性油も揮発性が高いものが多く漆には使えないものが多いが
原油精製物の中にはそうでないものもあるのでここでは残しておく。)
従って議論は植物性と鉱物性になるのだが、
漆器が食器であると考えると鉱物性のものは遠慮したい気になる。
植物性の油で揚げたから揚げや天婦羅は食べる気がするけど、重油で揚げた
から揚げや天婦羅は食べる気がしない。
これで漆に加えていい油は植物性という事に絞られた。
ではこの油の配合割合は?
油の配合割合による化学的な影響度合いは私は判らないので常識的に考えた。
”(体積比で)50%以上が漆じゃないとね。”
至極普通の感覚。
という事で漆と呼んでいいのは(食器使う場合の厳しい定義ではあるけれども...)
”漆分が体積比で50%以上で、加える化合物は植物性油に限る。”
という結論になった。
漆屋の観点でもう少し厳密に言うと、”塗る段階で”という前置詞がつく。
揮発成分を混ぜて塗ると塗り上がりは揮発分がとんで漆分が100%近くになる。
でも塗膜の強さは全然違うので”塗る段階で”というのが重要になる。
後日追記
その後の調査の結果、実際問題として現在の漆産業において
漆の添加物として植物性油 *1 を使うのは色々な意味で難しいことの様だ。
(*1 植物の種子を絞ってという単純な工程で出来る油では無いという意味。)
当然ながら、それらの添加物は各種法令に基づき安全性に問題が無いことが
確認され、漆への添加が許可されたものであるようだ。
でも、もう少しこの添加物について調査し、今後ご報告したいと思う。
漆の真空パック ― 2005年10月21日 08時25分00秒
漆って空気に触れると重合反応が起こって乾固するんでしょ。
って事は真空パックの漆ってありなんじゃないかな。と思うときがある。
一応これ”公知の事実”ということで。皆さん覚えておいて下さい。
って事は真空パックの漆ってありなんじゃないかな。と思うときがある。
一応これ”公知の事実”ということで。皆さん覚えておいて下さい。
漆刷毛や蒔絵筆に見る日本人の精神性 ― 2005年10月21日 11時11分11秒
漆に使う道具に漆刷毛や蒔絵筆というのがありますが、
これらの中に日本人の精神性が見て取れるような気がします。
それは何かと言いますと、毛の部分の長さが調節できるという事です。
漆刷毛は切り出す事で、蒔絵筆は軸の中に仕込まれた糸を引いたり出したりして
毛の長さを調節できるのです。
私は西洋の筆や刷毛の歴史に詳しい訳ではありませんが、
現在目にする刷毛や筆がその完成形だとすると、私の知る範囲では
漆刷毛や蒔絵筆の様に毛の長さが調節可能なものはありません。
つまり、西洋の精神性は必要に応じて道具そのものを変えるというものです。
でも日本古来の漆に使われる漆刷毛や蒔絵筆はこれと違う。
これをどの様に理解するかは難しいところですが、その中には
1つの道具を使いこなそうとする精神、単なる道具ではなく自分の体の一部に
しようとする精神、そんなものが見え隠れしています。
よく言われる道の精神でしょうか。
日本人の精神性が道具にも見ることが出来る気がします。
後日追記
採取時期、使用する時の温湿度などの様々な条件によって状態の異なる
天然塗料である漆を使うが故の知恵。
道具を使う人の個性にも対応する為の知恵。
道具にそういう余裕を持たせるのが何とも日本的と思いました。
物事を突き詰めていく西洋科学に対するアンチテーゼかも。
自然を上手く利用するという思考回路がそこにはある様な気がします。
これらの中に日本人の精神性が見て取れるような気がします。
それは何かと言いますと、毛の部分の長さが調節できるという事です。
漆刷毛は切り出す事で、蒔絵筆は軸の中に仕込まれた糸を引いたり出したりして
毛の長さを調節できるのです。
私は西洋の筆や刷毛の歴史に詳しい訳ではありませんが、
現在目にする刷毛や筆がその完成形だとすると、私の知る範囲では
漆刷毛や蒔絵筆の様に毛の長さが調節可能なものはありません。
つまり、西洋の精神性は必要に応じて道具そのものを変えるというものです。
でも日本古来の漆に使われる漆刷毛や蒔絵筆はこれと違う。
これをどの様に理解するかは難しいところですが、その中には
1つの道具を使いこなそうとする精神、単なる道具ではなく自分の体の一部に
しようとする精神、そんなものが見え隠れしています。
よく言われる道の精神でしょうか。
日本人の精神性が道具にも見ることが出来る気がします。
後日追記
採取時期、使用する時の温湿度などの様々な条件によって状態の異なる
天然塗料である漆を使うが故の知恵。
道具を使う人の個性にも対応する為の知恵。
道具にそういう余裕を持たせるのが何とも日本的と思いました。
物事を突き詰めていく西洋科学に対するアンチテーゼかも。
自然を上手く利用するという思考回路がそこにはある様な気がします。
”漆かぶれ”について(発症率) ― 2005年10月27日 11時11分11秒
上はかなり大まかな漆かぶれになる確率とその後の緩和傾向のグラフであるが、
統計的な理解としては上表の様な理解で良い。
”漆かぶれ”については初めて漆芸の世界に入ろうとする人にとって
避けては通れない問題なので触れておかねばならない。
ただ、特に漆かぶれについて気にせずにこの世界に入る人もいる。
その様な人は漆工芸品の美しさに魅入られて”とにかく”
(恐れよりも魅力が勝って)漆工芸をしてみようと考える方が多いようだ。
とは言え、一般的には気になる事なので以下に記述してみたいと思う。
自分が漆屋さんという事もあって(経験上の感覚から)漆かぶれについて
多少軽く記述してしまう点はご容赦願いたい。
で、序論。
1.漆かぶれで死ぬ人はいない。(のっけから軽くてすみません。)
意識的に全身に漆を被らない限り、漆かぶれで死ぬことは無い。
やけどでも全身の1/3(?)をやけどすると死に至るのと同様に
漆が全身の1/3に付着したらヤバイとは思う。
でも、漆自体がかなり粘性のある液体なので意識的にやらないと
(どんなに間違っても)漆が全身の1/3に付着することは無いと思う。
自然は良く出来たもので、漆の木は自身を傷つけた動物をかぶれさせて
懲らしめる事はするが命までは奪わない。
1.で”漆かぶれ”について怖さが無くなった方はかなり有望。
すぐ漆芸を始めて下さい。(笑)
なお、女性の方はかぶれて痒くて掻いてしまい、傷が皮膚に残るといけないので
以下の発症率に関する認識は正しく持って頂いた上で、
後日記載する予防編もご覧下さい。
ま、1.は基本ということで押さえておいて頂いて、本論。
この件に関して調べた時の詳しいデータは忘却していますが
かぶれの発症率についてはだいたい以下のような感じでした。
2.ほとんどの人が漆かぶれを経験する。
たしか、確率論的にみて漆に接した人の9割くらいはかぶれる。
被験者を100人とすると
かぶれる人 90人
かぶれない人 10人
だったかな。1割の人が漆かぶれを認知しなかった事に驚いた記憶がある。
3.漆にかぶれた人の症状は十人十色。
いわゆるアレルギーなので当然といえば当然だが、
漆に接した量、質、時期などによっても症状の程度は異なると
経験的に推測できる。
量が多く、質がいい(活性の高い)漆に接した場合に症状は重いと考えられ、
時期的には夏の症状が重い。
夏は人間の新陳代謝が活発で、汗腺も開いていたりと、
皮膚に漆が浸透しやすい時期だからだと思われる。
漆かぶれは怖いけどやってみたい方は冬に始めてみるのもいいかも。
漆を扱うときは夏でも長袖は必須なので初めて始めるにはちょうど良い。
ちなみに症状は十人十色で説明が出来ないが、どうしても心配なら
漆芸を始める前にパッチテストなどをしてくれる皮膚科で予め検査するのも
安心を得る意味でかなり有効な方法だと思われる。
4.免疫
医学的な免疫ができるかどうかは不明だが、2.にあげた漆にかぶれる人の
うち、80人はその後の漆への接触で発生するかぶれの症状の程度は
低減してくると答えている。(私もその一人。)
つまり、漆芸を続ける中で漆かぶれが気にならなくなる人は
程度の差こそあれ10人中9人(かぶれない人を含む)いると考えられる。
5.注意
・漆は天然塗料そのものであるからその時々で状態も違うし、
人間も体調などが違えば(疲れている時に風邪にかかり易いのと同じく)
漆かぶれの症状の出方も違う。
したがって、どんなに慣れても細心の注意は怠らない事が重要。
・上述してきた事は、漆が液体の状態である時の話で
乾固した状態のもの(漆器など)に接した場合は漆かぶれは発生しない。
但し、漆かぶれに敏感な人は塗りたての漆器でもかぶれる場合がある。
それは漆の乾固が表面から進行する為で、表面上は乾固していても
内側は乾固していない漆器に漆かぶれに敏感な人が接した場合である。
統計的な理解としては上表の様な理解で良い。
”漆かぶれ”については初めて漆芸の世界に入ろうとする人にとって
避けては通れない問題なので触れておかねばならない。
ただ、特に漆かぶれについて気にせずにこの世界に入る人もいる。
その様な人は漆工芸品の美しさに魅入られて”とにかく”
(恐れよりも魅力が勝って)漆工芸をしてみようと考える方が多いようだ。
とは言え、一般的には気になる事なので以下に記述してみたいと思う。
自分が漆屋さんという事もあって(経験上の感覚から)漆かぶれについて
多少軽く記述してしまう点はご容赦願いたい。
で、序論。
1.漆かぶれで死ぬ人はいない。(のっけから軽くてすみません。)
意識的に全身に漆を被らない限り、漆かぶれで死ぬことは無い。
やけどでも全身の1/3(?)をやけどすると死に至るのと同様に
漆が全身の1/3に付着したらヤバイとは思う。
でも、漆自体がかなり粘性のある液体なので意識的にやらないと
(どんなに間違っても)漆が全身の1/3に付着することは無いと思う。
自然は良く出来たもので、漆の木は自身を傷つけた動物をかぶれさせて
懲らしめる事はするが命までは奪わない。
1.で”漆かぶれ”について怖さが無くなった方はかなり有望。
すぐ漆芸を始めて下さい。(笑)
なお、女性の方はかぶれて痒くて掻いてしまい、傷が皮膚に残るといけないので
以下の発症率に関する認識は正しく持って頂いた上で、
後日記載する予防編もご覧下さい。
ま、1.は基本ということで押さえておいて頂いて、本論。
この件に関して調べた時の詳しいデータは忘却していますが
かぶれの発症率についてはだいたい以下のような感じでした。
2.ほとんどの人が漆かぶれを経験する。
たしか、確率論的にみて漆に接した人の9割くらいはかぶれる。
被験者を100人とすると
かぶれる人 90人
かぶれない人 10人
だったかな。1割の人が漆かぶれを認知しなかった事に驚いた記憶がある。
3.漆にかぶれた人の症状は十人十色。
いわゆるアレルギーなので当然といえば当然だが、
漆に接した量、質、時期などによっても症状の程度は異なると
経験的に推測できる。
量が多く、質がいい(活性の高い)漆に接した場合に症状は重いと考えられ、
時期的には夏の症状が重い。
夏は人間の新陳代謝が活発で、汗腺も開いていたりと、
皮膚に漆が浸透しやすい時期だからだと思われる。
漆かぶれは怖いけどやってみたい方は冬に始めてみるのもいいかも。
漆を扱うときは夏でも長袖は必須なので初めて始めるにはちょうど良い。
ちなみに症状は十人十色で説明が出来ないが、どうしても心配なら
漆芸を始める前にパッチテストなどをしてくれる皮膚科で予め検査するのも
安心を得る意味でかなり有効な方法だと思われる。
4.免疫
医学的な免疫ができるかどうかは不明だが、2.にあげた漆にかぶれる人の
うち、80人はその後の漆への接触で発生するかぶれの症状の程度は
低減してくると答えている。(私もその一人。)
つまり、漆芸を続ける中で漆かぶれが気にならなくなる人は
程度の差こそあれ10人中9人(かぶれない人を含む)いると考えられる。
5.注意
・漆は天然塗料そのものであるからその時々で状態も違うし、
人間も体調などが違えば(疲れている時に風邪にかかり易いのと同じく)
漆かぶれの症状の出方も違う。
したがって、どんなに慣れても細心の注意は怠らない事が重要。
・上述してきた事は、漆が液体の状態である時の話で
乾固した状態のもの(漆器など)に接した場合は漆かぶれは発生しない。
但し、漆かぶれに敏感な人は塗りたての漆器でもかぶれる場合がある。
それは漆の乾固が表面から進行する為で、表面上は乾固していても
内側は乾固していない漆器に漆かぶれに敏感な人が接した場合である。