”漆かぶれ”について(発症率)2005年10月27日 11時11分11秒

上はかなり大まかな漆かぶれになる確率とその後の緩和傾向のグラフであるが、
統計的な理解としては上表の様な理解で良い。

”漆かぶれ”については初めて漆芸の世界に入ろうとする人にとって
避けては通れない問題なので触れておかねばならない。

ただ、特に漆かぶれについて気にせずにこの世界に入る人もいる。
その様な人は漆工芸品の美しさに魅入られて”とにかく”
(恐れよりも魅力が勝って)漆工芸をしてみようと考える方が多いようだ。

とは言え、一般的には気になる事なので以下に記述してみたいと思う。
自分が漆屋さんという事もあって(経験上の感覚から)漆かぶれについて
多少軽く記述してしまう点はご容赦願いたい。

で、序論。
1.漆かぶれで死ぬ人はいない。(のっけから軽くてすみません。)
  意識的に全身に漆を被らない限り、漆かぶれで死ぬことは無い。
  やけどでも全身の1/3(?)をやけどすると死に至るのと同様に
  漆が全身の1/3に付着したらヤバイとは思う。
  でも、漆自体がかなり粘性のある液体なので意識的にやらないと
  (どんなに間違っても)漆が全身の1/3に付着することは無いと思う。
  自然は良く出来たもので、漆の木は自身を傷つけた動物をかぶれさせて
  懲らしめる事はするが命までは奪わない。

1.で”漆かぶれ”について怖さが無くなった方はかなり有望。
すぐ漆芸を始めて下さい。(笑)
なお、女性の方はかぶれて痒くて掻いてしまい、傷が皮膚に残るといけないので
以下の発症率に関する認識は正しく持って頂いた上で、
後日記載する予防編もご覧下さい。

ま、1.は基本ということで押さえておいて頂いて、本論。
この件に関して調べた時の詳しいデータは忘却していますが
かぶれの発症率についてはだいたい以下のような感じでした。

2.ほとんどの人が漆かぶれを経験する。
  たしか、確率論的にみて漆に接した人の9割くらいはかぶれる。
  被験者を100人とすると
  かぶれる人 90人
  かぶれない人 10人
  だったかな。1割の人が漆かぶれを認知しなかった事に驚いた記憶がある。
3.漆にかぶれた人の症状は十人十色。
  いわゆるアレルギーなので当然といえば当然だが、
  漆に接した量、質、時期などによっても症状の程度は異なると
  経験的に推測できる。
  量が多く、質がいい(活性の高い)漆に接した場合に症状は重いと考えられ、
  時期的には夏の症状が重い。
  夏は人間の新陳代謝が活発で、汗腺も開いていたりと、
  皮膚に漆が浸透しやすい時期だからだと思われる。
  漆かぶれは怖いけどやってみたい方は冬に始めてみるのもいいかも。
  漆を扱うときは夏でも長袖は必須なので初めて始めるにはちょうど良い。
  ちなみに症状は十人十色で説明が出来ないが、どうしても心配なら
  漆芸を始める前にパッチテストなどをしてくれる皮膚科で予め検査するのも
  安心を得る意味でかなり有効な方法だと思われる。
4.免疫
  医学的な免疫ができるかどうかは不明だが、2.にあげた漆にかぶれる人の
  うち、80人はその後の漆への接触で発生するかぶれの症状の程度は
  低減してくると答えている。(私もその一人。)
  つまり、漆芸を続ける中で漆かぶれが気にならなくなる人は
  程度の差こそあれ10人中9人(かぶれない人を含む)いると考えられる。
5.注意
  ・漆は天然塗料そのものであるからその時々で状態も違うし、
   人間も体調などが違えば(疲れている時に風邪にかかり易いのと同じく)
   漆かぶれの症状の出方も違う。
   したがって、どんなに慣れても細心の注意は怠らない事が重要。
  ・上述してきた事は、漆が液体の状態である時の話で
   乾固した状態のもの(漆器など)に接した場合は漆かぶれは発生しない。
   但し、漆かぶれに敏感な人は塗りたての漆器でもかぶれる場合がある。
   それは漆の乾固が表面から進行する為で、表面上は乾固していても
   内側は乾固していない漆器に漆かぶれに敏感な人が接した場合である。

コメント

_ 坂本 基夫 ― 2006年08月01日 13時41分24秒

名古屋の坂本と申します。和竿作りで漆にはまってますが、最近、和竿専門の釣り道具店でかぶれについてお聞きしましたら、蟹汁がよく効くと云われましたが、聞かれたことはないですか?

_ 杉ちゃん ― 2006年08月05日 14時52分26秒

tbについての知識が乏しく、回答が遅くなりました。
誠に申し訳ございません。

蟹汁という話は良く聞きます。
(松田権六著 うるしの話P70にも記述あり。)
同著には海水、ホウ酸、杉の葉などの記述もあります。
他には栗や桔梗なんていう話も聞きますし、
漆かぶれに効く温泉の話なんかも耳にします。
しかし、これらについては噂に聞くのみですし、
かぶれは個人の体質による部分も大きいので
私が自信を持って効きますとは言えません。

最近ではお医者さんでもかなり効く薬があるとか。
そちらの方を先にお試し頂いた方が良いかもしれません。

_ 阿部義定 ― 2010年04月25日 11時20分22秒

幼少の頃漆の下を通っただけで股下がかぶれ難儀したが
現在81歳趣味として螺鈿細工に興味が有りましたが問題はかぶれです、いろいろ調べましたが特効薬は無さそうですがかぶれが軽微に済む方法が有ればと思いお聞きいたします。

_ 杉ちゃん ― 2010年04月26日 09時30分07秒

かぶれについては皆さん気になるところですね。

かぶれを軽微にする方法はとにかく漆を皮膚に付けない事です。
長袖、長ズボン、靴下、ゴム手袋はもちろんですが、
その下にも長袖の下着などを着る事をお勧めします。
漆は浸透力があるので二重三重の防御が必要です。
漆は油があると乾きづらいので顔などのどうしても露出してしまう
部分には油性のクリームを塗るようにして下さい。

漆かぶれは漆が乾くときに皮膚と反応して炎症を起こす事によって
発症するものですので、漆が皮膚に付着したのが判ったら
早めに拭き取り、洗浄して下さい。

と言いつつも、私は表の8割の部分に入る人なので最初はかなり
かぶれましたが、今ではほとんどの場合、かぶれないか、
”あれ、痒いな。”程度で済んでいます。
もちろん、漆の扱いが上手くなり、皮膚に漆が付きにくくなったのもありますが、
今、久しぶりに手を黒くしてしまいましたが、痒くはありません。
統計学上9割の方が全くかぶれないか、程度の差こそあれ、
漆と付き合っていくうちに私と同程度の症状になると思われます。
だからこそ、漆芸を趣味にされる方が多いのです。
お近くに漆芸をやられている方がいらっしゃいましたら
かぶれについてお話を聞かれる事もお勧めします。

阿部様がこの9割の方に入っていればいいのですが。
皮膚科などでパッチテストを受けると統計上の3タイプのどれに当るか
判るかと思いますので、それをされるのも手です。

特効薬がないので阿部様のご質問の回答として物足りないものに
なっているかもしれません。ご容赦ください。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
【】の中の数字は何でしょうか?
【468165】

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://sugimotojapan.asablo.jp/blog/2005/10/22/116326/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。